福岡県の地方工務店、本気の木の家づくりのはなし。

地方で木の家づくりに取り組む安成工務店が、70年かけて到達したほんものの木の家づくりの話や、家づくりに関わるちょっとした話をしてみる、コラムサイトです。

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<その1>「家」と「断熱」のいま、むかし。

人はどうして「家」を建てるようになったのでしょうか。

その答えは様々あるでしょうが、原点としては、「厳しい自然環境から生命を守るため」といえます。

 

地球上の生き物は、外的要因から身を守るため、たいてい「巣」を作って暮らします。この「巣」の発想が「家」と同じものです。

なかでも鳥類は、人類と同じく、素材を集めて巣を作る珍しい生き物といえます。

しかし人類はその発想をさらに深化させ、より「強固」でより「快適」な巣作りをするようになりました。

熱帯地方では「高床式住居」、日本列島では「竪穴式住居」、中国では「石窟住居」…そういった地域の特性にあった「家」づくりの始まりです。

人類は進化の過程で、家に「快適」を求める気持ちがさらに高まり、さらに工夫を重ねます。もっと日差しを避けたい、もっと雨風を防ぎたい……特に寒い地域で発展したのが「断熱」です。

家の中は人が発する熱や火などで空気が暖められます。しかし、屋根や壁の薄いところから、また、隙間からその熱はどんどんと逃げてゆきます。

どうすれば貴重なその熱を家の中に保持し、室外に逃がさないようにできるか?

屋根を厚くし、隙間をふさぎ、密閉度を高めることになります。

こういった工夫が、「断熱」の原点です。

欧米では、断熱材として、1700年代に木造軸組み住宅のレンガと軸組の間に小麦のもみ殻が入っていたことが知らてれいます。

翻って日本ではどうでしょうか。

16001860年、江戸時代の民家と比較すると、1900年、文明開化した明治・大正・昭和初期にかけて、家のデザインは大きく変化しましたが、家の断熱は、実は余り進化をしていませんでした。冬の寒い時期は、熱の逃げる屋内で、火鉢や囲炉裏、炬燵など手元足元を温めて、着衣を増やし、布団を厚くしてなんとかやり過ごしていました。

その理由としては、日本ではとくに、夏の蒸し暑さをしのぐ工夫が優先されてしまったことがあるでしょう。六百年以上も前に、吉田兼好が「徒然草」に「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き比(ころ)わろき住居は、堪え難き事なり」と書いたのは有名な話です。

戦後、日本人の冬の暮らし方が大きく変わったのは、「灯油ストーブ」が登場したことでしょう。このことで、日本人の生活は、寒い日に「手元足元を暖める」ことから、ようやく「部屋全体を暖める」方向へ意識が向くようになっていきました。

そして、日本の住宅で「断熱」が大きく見直される事件が起こります。1970年代のオイルショックです。中東からの石油に頼り切っていた日本の政府は、慌ててエネルギー消費の節約に目を向けるようになりました。

これまでのような、隙間風が吹き抜ける、風通しの良いだけの家づくりでは、冬の消費エネルギー負荷が高すぎることに気づいたのです。「灯油ストーブ」によって得た暖かさを、外に逃がさない工夫が求められるようになりました。

そして、1979年、「エネルギー使用の合理化に関する法律」、いわゆる「省エネ法」が制定されました。これにより、住宅も、新築の際に「断熱材」を入れることが住宅金融公庫の融資基準に採用されたのです。

「省エネ住宅」や、「断熱材」は、もともと日本とは比べ物にならない寒さの北欧や北米で発展した技術ですが、日本の住宅への採用は、今からわずか四十年ほど前の、とても新しい出来事なのです。

省エネ法制定後、ルームエアコンの普及にはずみがつきます。

1980年に約5割、2000年頃にようやく8割の家庭に設置されるようになりました。平成元年は1989年ですから、ルームエアコンの各家庭への普及は、平成時代にようやく始まったものといえるでしょう。

普及当初、「エアコン」はエネルギー消費量が高く、いっそうの断熱性が求められるようになりました。こうして、住宅の断熱性を重視する時代がようやく到来したのです。

 

そして1997年、地球温暖化に関する国連会議で「京都議定書」が締結されると、日本でもさらに省エネ政策が進むことになります。今では2~5年に1度くらいのペースで省エネ法は改正され、その度に住宅に求められる断熱基準は高くなっています。

現在の「家」と「断熱」を考えた時に、さまざまなキーワードが思い浮かびます。「ゼロ・エネルギー住宅」「高気密・高断熱」「外断熱・内断熱」「省エネ基準」……。

しかし、一般の方は、これらの言葉のすべてを理解し、家づくりに向かうことは難しいかもしれません。しかし、それらが「快適な家づくり」に欠かせない要素であることは間違いありません。

 

私たち安成工務店は、地域の気候風土に最適な家づくりをお客様にご提供しています。

そのために、「家」と「断熱」をどう考えているか、考えるべきか、次の機会にお話ししようと思います。